私は平野運送 株式会社で2013年からドライバーとして働き始めて11年が経ちました。
しかし、辞める決断をしました。
今回この記事では自分が辞める理由となった、平野運送で採用されている特殊な給与体系について書いていこうと思ってます。
この会社の社労士は合法であり違法性はないと言います。
しかし、残業しても大して増えずに仕事をしても増えないこの給与体系に自分は納得ができません。
これから平野運送に入社を考えている人に参考になると思うので記事にすることにしました。
平野運送に入ろうか考えている人はぜひこの記事を読んでから決断をして欲しいです。
平野運送(株)の概要
平野運送と言う名前の会社は他にもあるかもしれないので間違えないように概要を書いておきます。
平野運送は東京都江東区にあります。
住所
東京都江東区平野4-13-17
電話番号
03-3630-5333
会社のホームページはありません
運送業を営んでいる会社です。
運んでいるものは主に紙類。
仕事内容としては企業にコピー用紙を配ったり、印刷工場や倉庫に平版や巻き取りを持って行ったりします。
トラックの大きさは3t車からフルサイズまであります。
基本的に入社したばかりの新人は3t車に乗って、その後だんだん大きい車に乗り換えていきます。
平野運送の給与明細
現在、自分は7トン車に乗っていますが額面で35万~37万円、手取りで20万円台後半です。
こちらが実際の2023年8月の給与明細です。
赤枠で囲ってあるところが額面と手取りです。
月によって増減しますが、手取りは26万円~29万円位です。
ご覧の通りに手当が多いのが特徴です。
注目してほしいのが乗務時間外手当というところです。
黄色い枠で囲ってある所です。
これは最初の会社からの説明だと歩合だと聞かされていました。
そしてかなり複雑な計算方法を取っています。
これから説明をしようと思いますが複雑なため次の段落は飛ばして読んでもらっても大丈夫です。
しっかりと理解したいと思う人だけ読んでもらってそれ以外の人はその次の段落から読んでください。
平野運送の特殊な給与システム
この乗務時間外手当は複雑な計算式が使われています。
そして計算に必要な数字はこちらでは知ることができず、会社に言わないとはっきりとした数字を教えてくれません。
乗務時間外手当とは「売上基準額」と「粗利基準額」を足したものに「実出勤率」を掛けたものです。
乗務時間外手当=(売上基準額+粗利基準額)×実出勤率
それぞれの計算方法を書いていきます。
売上基準額
こちらは簡単です。
売上基準はその名の通り個人がトラックを運転して売り上げた金額をもとに計算されます。
売上基準の支給額をまとめた表がこちらです。
表の通りに3段階しか変化せずにその間もかなり幅があります。
個人の売上が70万未満の場合25,000円、70万~100万未満は30,000円、100万以上で40,000円です。
粗利基準額
次に粗利基準額です。計算式はこちらです。
粗利基準額=会社の平均粗利額×(本人の粗利率÷全社平均粗利率)×本人評価率
「会社の平均粗利額」とは会社全体の粗利をその月に稼働した運転手の人数で割ったものです。
「本人粗利率」は本人の粗利を本人の売上で割ったもの。
「全社平均粗利率」は会社全体の粗利を会社全体の売上で割ったもの
「本人評価率」とは1~7までの評価がありその数字によって変動します。
その数字は次の表のとおりです。
経費の内訳
粗利を出すときに計算される経費は下の4種類です。
残業代 燃料代 高速代 駐車場代
粗利の計算方法
粗利の計算方法は以下の通りです。
粗利=売上-(残業代+燃料代+高速代+駐車場代)
実出勤率
売上基準額と粗利基準額を足した後、最後に実出勤日数を所定労働日数で割った実出勤率をかけます。
実出勤率=実出勤日数÷所定労働日数
例えば1ヶ月で20日間の出勤する日があった場合にの所定労働日数は20日となります。
例えばその月に1日休んだ時は実出勤日数が19日になります。
なので、実出勤率は19÷20=0.95となって、この数字を最終的に売上基準額と粗利基準額を足したものにかけます。
平野運送の乗務時間外手当の問題点
この乗務時間外手当の計算方法にはいろいろな問題点があります。
その問題点をあげていきます。
最低賃金以下の残業代、そして残業をすると乗務時間外手当が減る
まずこのシステムで一番おかしいと思うのが残業をすると乗務時間外手当が減ることです。
そして、そもそもの残業代の単価も1,160円と最低賃金以下の数字になってます。
当初の説明だと「経費が1,000円増えても数円しか変わらない」という説明をされてました。
「じゃあこんな計算する意味ある?」と思ってましたが、やっぱり真っ赤な嘘でした。
実際に乗務時間外手当の計算してみると使った経費の1割くらいの金額が減らされています。
なので、残業の単価はホントに最低賃金以下の金額しか払われません。
8時間残業しても実出勤日数が増えない
8時間残業をしたら1日分の給与以上の金額が出なければいけないのに、その金額には全く届かない金額しか支給されません。
普通に考えたら乗務時間外手当の計算方法では8時間労働したら1日分実出勤日数が増えてもいいはずなのですが、そうなることもありません。
増えそうで増えない乗務時間外手当
乗務時間外手当の計算式を見ていると、「会社の他の人たちよりも経費を使わなければ、他の人より多くもらえるんじゃないか?」と思います。
しかし、そんなことはありません。
しっかりと計算式に数字を入れてみると掛け算と割り算の関係で消える数字があります。
そのため粗利基準額の計算方法は
粗利基準額=総売上÷稼働した人数×本人の粗利率×本人の評価
となりさらに簡潔に書くと
粗利基準額=会社全体の売上の平均×本人の粗利率×本人の評価
となります。
仕事上、経費を抑えたとしても無くなることはありません。
なので本人の粗利率を上げても限界があります。
そして、「会社全体の売上の平均」なので個人が頑張ったとしても増えません。
それどころか、他の人より多く売り上げるように頑張ったとすると、経費が余計に掛かってしまうため結局のところ全然増えません。
さらに平野運送は紙の仕事しか受けてないため仕事もそんなにありません。
なので会社全体の売り上げを上げようにも上げられません。
そして会社全体の売上を上げようとトラックの台数を増やしても稼働人数が増えるので、会社の売上は上がっても平均値は上がりません。
もう1つ言うと、会社の平均売上を出すときの運転手の人数なのですが、その月の大半を休んだ人がいたとしても月に1日でも出勤すれば1人と計算されます。
休む人がいれば他の人が忙しくなって経費を多く使う事になるのに、全くそのことは反映されません。
無駄に複雑な計算をしている
前の所で指摘したことなのですが、なんでこんな無駄な計算をしているのか理解できません。
複雑な計算方式にして従業員に深く追及されるのを逃れるためじゃないかと思っています。
建前上は歩合のようなシステムにして「人より経費を使わないで仕事をすれば給料が増えるよ!」と言って、実際は全くそんなことがなく、会社は残業代を払いたくないというのが本音でしょう。
売上基準の幅が大きすぎる上に売り上げても大して増えない
売上基準の方も問題があります。
上の方にあった表をもう一回見てみましょう。
真ん中の列の70万円~100万円未満を見てください。
30万円も幅があるのはおかしいと思いませんか?
70万円売り上げた人と99万円売り上げた人が同じ金額なんです。
さらに100万円以上売り上げたとしても70万円未満と比べて15,000円しか変わりません。
自分は100万以上の売り上げを立てていることが多いのですが、まだ7t車です。
自分のトラックより大きな11t車やフルサイズのトラックに乗っている人もいます。
その人たちは明らかに自分より多く売り上げています。
おそらく150万位稼ぐ時もあるのではないかと思います。
しかし、売上基準で増えるのは70万円または100万円以上になった場合だけです。
それ以上に売り上げたとしても給料が増えることはありません。
さらにそれだけではなく、大きいトラックに乗っている人は他の人より多く「残業」をして「高速」に乗って「遠く」に行きます。
つまり、経費(残業代、高速代、燃料代)を人より多く使ってしまうので自身の粗利率が下がってしまいます。
どういうことかと言うと給料(乗務時間外手当)が減ってしまうのです。
有休を使うと実出勤率が減る
平野運送の就業規則には有給休暇を使った場合は実際に出勤しているのと同じように扱うという記載があります。
しかし、実際に有休を取るとこの乗務時間外手当は減ります。
会社は会社自身で作った就業規則さえも無視してこのシステムを運用しています。
問題だらけの給与システムだが労基署の判断は?
いろいろ問題があるので労働基準監督署に行きました。
しかし、結論から言うと法律的には問題がないそうです。
なぜかというとこの歩合と呼ばれていた「乗務時間外手当」が就業規則上は「残業代」として扱われているからです。
なんと会社は従業員に対してずっと乗務時間外手当は「歩合」と言ってましたが、実際の就業規則上は「すべて残業代として出している」とのこと。
乗務時間外手当は残業をしなくても出る
しかし、残業をしなくても乗務時間外手当はしっかり払われます。
なのにこれが残業代と言うのはどうしても納得ができません。
中身は残業代ではないのに、名前だけ残業代のような名前にしていればOKなんてそんなのはおかしいです。
これは明らかに法律をかいくぐろうとするためのトリックです。
でも労働基準監督署は動いてはくれませんでした。
民事で裁判などを勧められました
労基署の人からは民事で裁判などをすることを勧められました。
労働基準監督署はそもそも個人の救済などはしません。
法律に乗っ取ってやっているかというところでしか判断しないそうです。
警察みたいな感じですね。
契約などの民事の話は弁護士に頼るか裁判をするなどの方法しかないようです。
似たような裁判例
いろいろネットで調べたりしましたが、特殊な給与システムのため全く同じ例は出てきませんでした。
しかし、少し似たような判例で残業をすると歩合が減るというタクシー運転手が会社と争った最高裁の判例があったのでこれが使えるのではないかと思いました。
国際自動車事件について書かれた記事
https://www.jikosoren.jp/sokuhojyoho/syunto/2020/jyoho2010.pdf
こちらの事件ではなんと残業をすると歩合がどんどん減らされて0になってしまうこともあるというかなりひどい労働条件について争われたそうです。
しかしこんなにひどい労働条件なのに最終的に最高裁まで争われて、最後は労働基準法 第37条の趣旨に沿わないということになり労働者側が勝ったようです。
厚生労働省のHPより
時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条) 時間外、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合には2割5分以上、法定休日に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
国際自動車の事件の記事に書いてありますが、この労基法の第37条は時間外労働などを抑制する意味もあるとのことです。
この平野運送の給与システムは全く労基法第37条の趣旨に沿わないものです。
自分の主張
自分の主張としてはこの乗務時間外手当は基本給の一部だと思ってます。
根拠としては残業をしなくてももらえるし、出勤日数によって数字が減ったりするからです。
さらに本人の評価も金額に反映されているからです。
歩合と言うにも違うと思います。
歩合であればいくら売り上げたらいくら増えるというものですが、この計算式では売上によって変化する金額は3段階しかないです。
こんなものを歩合というわけにはいきません。
なので残業代の計算するときに乗務時間外手当も基本給として計算に入れなければいけないと思います。
それを加味して未払いの残業代を計算すると3年間で100万円ほどの金額が支払われていないことになる計算でした。
自分の最近の残業時間は月に20時間ほどです。
しかし、違う部署の人は月に60時間ほどしている人もいます。
その人達はおそらく300万位の金額になるのではないかと思います。
これからどうするか
労基署も動いてくれないのでこれからどうしようか考えてますが、とりあえず未払いの残業代を請求しようと思います。
素直に支払ってくれればいいのですが、まずそんなことは無いだろうと思います。
ただ、請求しないことには始まらないのでやってみようと思います。
そして最初にお話ししましたが、平野運送はもう辞めようと思います。
常務取締役から「従業員と寄り添いあってやっていくことはない」ということを言われました。
以前には「お前の話は聞く気はない」とはっきり言われたことがあります。
こういうお金の話をするたびになぜか「俺は経営者だから」と言って、偉ぶって聞く耳を持たない人とは働きたくありません。
自分の働いて稼いだ金額がこの家族経営の会社に搾取されていると考えると頭にきます。
一度も見たことない人間が役員に名を連ねていて、そこにも自分たちが残業して働いた分が取られてしまっているのかと思うとやってられません。
この後どうなったのかはまた書いていこうと思ってます。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
コメント